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2025.12.08 配信/メールマガジン

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【Happyケアメンテ技術通信】クリーニング師の国家資格は公衆衛生の向上を目的にしており、汚損した衣類・衣服をキレイにするのとは異質のものです

2025.12.08

【Happyケアメンテ技術通信】クリーニング師の国家資格は公衆衛生の向上を目的にしており、汚損した衣類・衣服をキレイにするのとは異質のものです

クリーニング業を営むには、クリーニング業法に基づいた国家資格のクリーニング師が必要です。クリーニング業法は、今から、75年前の昭和25年(1950年)に、「公衆衛生の向上」と「利用者の利益擁護」を目的に施行されました。クリーニング師は、クリーニング業法に基づいた国家資格であり、法律の目的が「公衆衛生の向上」と「利用者利益の擁護」であるため、衣類の洗濯、仕上げの技能に関しても衛生水準を維持する責務があります。

昭和25年と言えば、太平洋戦争に敗戦した直後で戦災の傷跡も残り、世の中が荒廃し食糧難や社会インフラも整わず、上下水道なども未発達の状態でした。そういう時期に、伝染病や様々な感染症が広がるのを未然に防ぐために、昭和22年(1947年)に「保健所法」が施行されました。それに基づいて、公衆衛生の考え方を基盤としたクリーニング業法が制定され、クリーニング営業者は、クリーニング師の免許を必要とすると定められたのです。

国家資格のクリーニング師を取得するには、公衆衛生の知識を習得することが第一義で、それに加えて、実技試験を受けて合格することが必要になります。

クリーニング師の実技試験は、繊維の識別やアイロンによる仕上げテストに合格すれば、クリーニング師の資格が認定されて、クリーニングの技能職者となります。

しかしながら、ワイシャツのアイロン仕上げは、少し手先の器用な人なら誰でも可能であり、また、繊維をウールや綿、化繊の識別できるからと言って、クリーニング全般の実技における実践的な技能職者と見做すには、いささか疑問が残ります。

このテスト基準が、75年経った今も変わることなく続けられているのですが、令和6年(2024年)4月1日に「クリーニング業の振興指針」が改正され適用されました。

この改正についても、新型コロナウイルスなどの感染症に対応するための「衛生管理の向上」に重要視されたものになっており、もちろん「クリーニング師の資質向上」も織り込まれているのですが、クリーニングにおける実践的な技能の資質向上ではなく、「衛生管理水準」の資質向上に重点が置かれたものになっています。

また、国家資格を持ったクリーニング師という技能職であるとしながら、クリーニングのトラブルが、国民生活センター、地方の消費者相談センターに、異常なほどの量が持ち込まれている実態があるのです。

そこで、国民生活センター、消費者相談センターに持ち込まれているクリーニングトラブルの事例を挙げてみると、シミ・汚れについては、汗ジミが取れていない、除去したシミが滲んで広がって後から浮いてきた、腐ったような不快な臭いがするなどがあります。

変色や色落ちについては、クリーニング後に色が変わった、花柄の色が滲んだ、黄ばみ・黄変した、濃色と淡色・パステルカラーの衣類を一緒に洗ったことによって色移りしたなどがあります。

さらに、破損や形態・シルエットの変形では、シルエットが壊れてしまった、ボタンが無くなった・壊れた、ネクタイが捻じれて変形したなどがあり、また、風合いの変化では、ゴワゴワして硬くなった、ダウンコートの羽毛が片寄って硬くなるなど、クリーニングでキレイに「出来ない」というトラブルが増えて、国家資格を持ったクリーニング師の仕事とは言い難いクリーニングトラブルが後を絶たないのです。

特に最近、利用の増えている宅配クリーニングでは、クリーニングのキレイに「出来ない」というクリーニングトラブルも含めて、衛生管理上における水準に満たされないものがあるようです。さらには、お客様との納期約束が守られず品物が届かず、電話も繋がらないというトラブルが急増しているという実情があるようです。

こういう新しいクリーニングの業務形態に対して、75年前の「クリーニング業法」では対応できないところがあって、令和6年(2024年)4月1日より「クリーニング業の振興指針」として改正されたのは、上述の通りです。

クリーニング業法の改正の要旨は、2019年12月に起きた新型コロナパンデミックなどの感染症に対応するために「衛生管理を向上」することにあり、同時に、「クリーニング師の資質向上」を視野に入れたものになっています。

「クリーニング師の資質向上」という、洗浄して、シルエットを整えて仕上げするための専門知識を習得するための「クリーニング師の資質向上」かと思いきや、意外にも「衛生管理の向上」をするための「クリーニング師の資質向上」を図る法改正になっています。

クリーニング師の衛生管理の資質向上は重要なことながら、国民生活センター、消費者相談センターに持ち込まれるクリーニングトラブルを解決することも重要課題であり、これを放置しまま「衛生管理の向上」を目指しても、クリーニング利用者の「利益擁護」を図ることはできないと考えられます。

「クリーニング師の資質向上」を訴えるのであれば、クリーニング師のクリーニングにおける洗浄から仕上げに至るクリーニングの実践技能を磨く法改正も併せて行われるのが最低限必要になるのではないかと思料されるのです。

例えば、衣類・衣服のクリーニングをするには、洗浄してシルエットを整える仕上げする工程で、次の知識と経験、技能力を習得し、体得していなければなりません。

具体的には、衣類・衣服の特性(長所、欠点の特性)、繊維や染色・紡織・縫製の製造工程、繊維の加工(防縮・防シワ・防汚など)技術、シミ・汚れと洗剤(界面活性剤)・有機溶剤の化学的解決根拠、洗濯機械の機械工学的解決根拠、さらには、最近の衣類に多用される繊細で高度・高機能の動物繊維、植物繊維、繊維素繊維、化学繊維の特性(長所、欠点の特性)、ボタンやスパンコール・ジュエリーの飾り物の付属物など、さらに、日進月歩で、進歩・進化する衣類・衣服(繊維製品)のマーチャンダイジング(MD:各国における衣類・衣服の市場・トレンド分析、商品企画・開発=デザイナーと連携、販売計画の立案、生産・供給管理、販売戦略の実行と管理)、世界を代表するトップブランドの高度なデザインと希少価値の高い繊維素材について等々、最近では、コンピュータテクノロジーの知識が必要になり、複雑多岐にわたる様々なファッションにおける専門知識・スキルを身につけて、洗浄、仕上げに活かすことが必須と言えるのです。

そして、これらをクリーニングの生産工程に組み込み、衣類・衣服をキレイな状態に具現化して、お客様へ引き渡すのがクリーニング師の仕事だと明言できるのです。

ところが、クリーニング業におけるクリーニング師の国家資格は、公衆衛生に重点が置かれ、実技試験は、ワイシャツの仕上げ(制限時間内にワイシャツの形が、ほぼ整えられていれば合格であり仕上げの美しさは軽視されている)と、数種類の繊維を識別するに留まっていることから、クリーニングの不満続出で、その不満がクリーニングトラブルであると言い換えられるのです。

クリーニングの利用客は、国家資格を持った技能職者であるクリーニング師にキレイにしてもらうために、また、それを信じて、クリーニング代金を支払って、クリーニングを利用しているのであり、その技能が無いのなら「クリーニングにお金をかける必要はない」と、利用者の落胆の結果がクリーニングトラブルとしてレッドカードを突き付けているのです。

そして、利用客のレッドカードが、クリーニング市場を激減させていることから頷けるのです。1992年に実施した総理府の統計では、クリーニング市場の規模は8200億円とされ、巷間、1兆円の経済規模があるとしていました。ところが、2023年、矢野経済研究所が実施したクリーニング市場規模の調査では1700億円に激減しているのです。この減少傾向は、今後も続くことが予測されています。

クリーニング市場が、“なぜ、これ程ほどまでに縮減するか”を、今、一度、大局的な見地から検証をしていくと、ファストファッションの席捲によって家庭洗濯が主流になってきたことが挙げられます。その他に、新型コロナ、異常気象による影響などがあると分析できますが、クリーニングの利用客は、前段で述べたようなクリーニング市場の激減の理由について、全く関心がないと言ってよいのです。

クリーニングの利用客は、未熟なクリーニングに茫然自失になり、止む無く国民生活センター、消費者相談センターにクリーニングトラブルのレッドカードを提示して、警鐘を鳴らして戒めを働きかけていると推察されるのです。

以上の客観的事実から結論を導くと、クリーニング業法によって認定されたクリーニング師の「公衆衛生の向上、利用者の利益擁護」は、クリーニング利用客の満足を得ることであるにも関わらず、クリーニングトラブルが増加しているのであれば、クリーニング師としての責務を全うしていないことになります。

このように検証していくと、汚損した衣類を新品のようにクリーニングでキレイにする専門知識における技能と、クリーニング業法に基づいた国家資格のクリーニング師との関係が切り離されているところにクリーニングの問題があるようです。


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