ウールの不思議
ウールの起源から
上質ウールへの道のり
上質な高級服地に使われる天然繊維の代表ともいえるのが「ウール(Wool,羊毛)」。
人類にとってウールの歴史は古く、紀元前8000年頃から利用してきたといわれています。
ウールの特徴
・冬は暖かく、夏は涼しい
ウールは空気を多く含むため、化学繊維の5分の1、綿の2分の1しか熱を伝えません。暑さや寒さという外気から体を守ってくれます。
・水をはじくのに、湿気や汗を良く吸い取る、優れた吸湿性と放湿性
ウールの吸湿力は綿の約2倍、ポリエステルの約40倍!「ウールで寝る子はよく育つ」と言われるほど人体にやさしい、“さわやか”繊維。また、ウール繊維はエピキューティクルというとても薄い膜で覆われているため、表面に汚れがつきにくい“クリーン”な繊維です。
・弾力性に富む
バネ(コイル)のように元に戻る、優れた弾力性でシワになりにくいです。
・燃えにくい
江戸時代の“火消し”役は、ウールの羽織で活躍していたそうです。
・染めやすく色落ちしにくい
染料との相性(結合力)がとても良く、キレイな色に染まります。
・フェルト状になる
この特性を活かした生地が、糸を織らずに作ることができる「フェルト」。但し、洗濯面においては欠点となる特性です。
このように、撥水性を保ちながら吸放湿性に富み、夏は涼しく冬は暖かいという、多くの矛盾した性質が巧みに調和し合うウールの優れた性質は、現代科学の力をもってしても生物の神秘には未だ遠くおよびません。
特に、ウールの中で洋服素材として一番親しまれているメリノウールは、素肌になじみ、細くてしなやかな弾力性に富む上質のウールです。メリノ種の羊毛繊維をより細く軽くする研究は現在も続けられ、細いものほど「高級ウール」として扱われています。
原料となる羊毛が細ければ細いほど、生地は薄く柔らかになるため、服地メーカーは世界中の原毛をどこよりも早く確保しようと競い合います。こういった特別な繊維は、ごく少量の産出量のため、製品は百万円単位相当のプレミア価格となります。
極細スーパーウールは希少価値
上質な生地を見分けるための要素となるのが、高級スーツ地などに見られる「Super○○○‘S」の表記。
これは“羊毛番手”を表す単位です。スーパーの数字が大きいほど原毛の太さは細くなり、光沢感や手触り、美しさなどが上質になります。「スーパー150’s」素材は、1キログラムの綿糸をばらして糸にひいた時、150キロメートルまで伸びるとされます。
羊毛の太さ(ミクロン)と羊毛番手
メリノ種羊毛 | 太さ(ミクロン) | 羊毛番手 |
---|---|---|
エキストラ・スーパー・ファイン | 15.5 | 150’s |
エキストラ・スーパー・ファイン | 17.5 | 120’s |
スーパー・ファイン | 18.5 | 100’s |
スーパー・ファイン | 19.0 | 90’s |
ファイン | 19.5 | 80’s |
※ミクロン=1000分の1ミリ
一般的なウール製品の場合は30~25ミクロン程度であるため、スーパー表示には該当されません。
特にオーストラリア南東に位置するタスマニア島で採れる羊毛は「タスマニアウール」といい、「スーパー120’s」以上の細さで世界総産毛量の0.8%と、産出量が極めて少ない最高級「エキストラウール」の品種としてよく知られています。
スーパーの数字が大きくなればなるほど、光沢や手触り感、美しさも上質になりますが、逆に耐久性が劣るようになります。
最近では、1キログラムで570キロメートルにもなる世界で最も細いシルク糸と、この「エキストラウール」を撚り合わせ、独特の光沢となめらかな感触という原料本来がもつ品質の良さを最大限に引き出した革新的な新素材も開発されています。
このような上質な繊維が使われた高級衣服を購入しても、デリケート過ぎてメンテナンスが難しく数年で着られなくなるため、ラグジュアリーブランドメーカーやデパートでの衣服販売に翳りがあるとされています。
上質なウールを
水で洗うのはタブー…
でも、あきらめないで!
汚れを落とし長持ちさせるメンテナンスは「水洗い」が一番ですが、ウールの繊維表面には私たちの人毛と同じようなウロコ状のスケールがあり、汗などの湿気や摩擦を加えると、このスケールが開いて絡み合い「フェルト化」するという特徴があります。
エキストラウール」のような高級な繊維を使った衣服を水洗いすれば水に浸けるだけで一気に縮み、シルエットは崩れ、風合いも損なわれ、再生が不可能となります。こういった高級獣毛素材を「水」で洗うことは敬遠されてタブーとされていました。
しかし、ハッピーは、このような水洗いの限界をクリアすることに成功したのです。
それが無重力バランス洗浄技法®です。
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